勉強ノート

診療中に気づいたClinical Questionについて、自分なりにまとめています。間違いがあったら教えて下さい。

循環器

自律神経受容体の作動物質、作用、作動薬と拮抗薬の種類まとめ

自律神経受容体の作動物質と受容体 交感神経/副交感神経共に節前ニューロンから放出される伝達物質はアセチルコリン、節後ニューロンにある受容体はニコチン受容体 (平滑筋、腺)交感神経節後ニューロンから放出される伝達物質はノルアドレナリン、効果器に…

強心配糖体(ジギタリス)の陽性変力作用について

強心配糖体(ジギタリス)は、心筋細胞のCa濃度を上昇させることによって強心作用(陽性変力作用)を発揮します。メカニズムは以下の通りです。 強心配糖体は細胞膜に存在するNa-K ATPaceを阻害する。 これにより細胞内のNa濃度が高くなる。 細胞膜に存在す…

ペースメーカー:モードスイッチ(AAI⇔DDD)のエビデンス

これまでデュアルチャンバーペースメーカー(心房、心室の二腔を順次ペーシングできるもの:DDDなど)とシングルチャンバーペースメーカー(心室のみをペーシング:VVI)を比較した大規模臨床試験において、DDDはVVIと比較して、脳卒中、心不全、全死亡など…

循環器疾患を合併した睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者に対する陽圧呼吸療法の効果

”循環器疾患を合併した睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者に対する陽圧呼吸療法は無効だ”という結果が多いようです。SASは循環器疾患の原因というよりも、結果として生じている可能性が高いのかもしれませんね。2015年のNEJMのRCTでは P:中枢性睡眠時無呼吸患者…

ブルガダ症候群に対するカテーテルアブレーション治療

2011年のCirculationに発表されていました。P:心室細動の既往のあるブルガダ症候群(type1)の9症例 E:アブレーションを行うと C:治療前と比べ O:どうなったかこれまでブルガダ症候群のVT/VFの起源として右室流出路が想定されていました。この部位を起源…

心サルコイドーシスの治療

ステロイド療法の効果が不十分、再燃した場合にはメトトレキセートの併用を考慮しても良い(内科学会雑誌2015、6月号より引用) 標準的な投与方法は確立していない 報告では6mg/週から開始、8mg/週で維持療法 ステロイド5mg/日との併用で治療効あり メトトレ…

ジギタリスの至適血中濃度

Digitalis Investigation Group (DIG) trial のpost hoc解析 P:洞調律が維持されている心不全患者 (収縮不全、拡張不全を含む) E:基礎薬(ACE-I、利尿薬)にジギタリスを追加 C:基礎薬にプラセボを追加 O:予後が改善するか? 1年後の総死亡、心血管イ…

心臓移植の適応

日本循環器学会心臓移植委員会のホームページに記載されています。 (一部抜粋) 適応となる疾患 拡張型心筋症、および拡張相の肥大型心筋症 虚血性心筋疾患 その他(心臓移植適応検討会で承認する心臓疾患) 適応条件 不治の末期的状態にあり、以下のいずれ…

心筋トロポニン

心筋トロポニンTの上昇は急性冠症候群(ACS)の診断に非常に有用な検査ですが、様々な要因で上昇することが知られています。救急外来でトロポニン陽性患者のうち、ACS以外の疾患と診断された患者の割合は約65%と報告されていますので、検査値の解釈には注意…

海外の学会で大事だと思った事

先日、海外で開催されたカテーテル治療関連の学会で、症例報告をする機会がありました。他の先生の発表を見たり、質問内容をチェックしてみて、高い評価を得るために大事だと思った点を箇条書きにしておきます。内容について 症例の背景とカテーテル治療の適…

心原性脳塞栓症の原因と検査方法

心原性脳塞栓症の原因疾患は以下の通り、 器質的心疾患の存在は、心エコーと経食道心エコーで鑑別可能です。 心房細動 壁在血栓 心筋梗塞 拡張型心筋症 人工弁 細菌性心内膜炎 心房中隔欠損 卵円孔開存 心房中隔瘤 もやもやエコー 僧帽弁石灰化 心房粘液腫 …

Slow flow / No-reflow 改善しないときに考えるべき病態

全身の要因 抗血小板薬の前投与がなされているか アスピリン耐性がないか クロピドグレルのpoor metabolizerではないか ヘパリンの投与が十分か(ACTが250以上あるか) HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)ではないか 血圧の低下 冠動脈の状態 冠攣縮 もとも…

クラミジア肺炎と動脈硬化

感染による炎症で動脈硬化が誘導されるという、基礎的、臨床的な研究結果が報告されています。動脈硬化との関連が示唆される感染症は、以下の通りです。 単純ヘルペスウイルス サイトメガロウイルス 歯周病菌 ヘリコバクター・ピロリ クラミジア肺炎 クラミ…

slow VTとAIVR(Accelerated Idioventricular Rhythm:促進性心室固有調律)

slow VT=AIVR AIVRが正しい呼称です 少なくともBraunwald's Heart Diseaseにslow VTは記載されていませんでした 心筋梗塞急性期に再潅流療法を行った後、数日間みられる事が多い 特徴 心室の自動能が促進されて起こります 心拍数は50〜110bpm(100bpmと定義…

冠攣縮性狭心症の予後

日本人の3年後の死亡率3%、欧米では11% 器質的狭窄は、日本人16%、欧米人52%に合併 欧米では心筋梗塞の発症が多いため死亡率が高いと考えられている 日本人は、びまん性の冠攣縮が誘発される人が多い(日本人20%、欧米人7%) びまん性の攣縮と部分的(focal…

新規抗凝固薬で脳出血が少ない理由

心房細動患者における抗凝固薬の無投薬下での脳出血の発症率は0.2~0.3%、ダビガトランの投与を行っても、この比率の増加はなく、頭蓋内出血の副作用は無いと考える事ができるとの事です。以下の仮説が考えられています。 血管損傷時に凝固カスケードを開始…

心エコーにおける下大静脈径/呼吸性変動からの右房圧推定値

下大静脈径 呼吸性変動 推定右房圧(mmHg) 小(<15mm) 虚脱 0〜5 正常(15〜25mm) >50% 5〜10 正常(15〜25mm) <50% 10〜15 拡大(>25mm) <50% 15〜20 拡大+冠静脈拡大 不変 >20 日本循環器学会肺高血圧治療ガイドラインP-8より抜粋

PCI時のSlow flow / No-reflow

Slow flow / No-reflowの発症の予測因子は以下の通り病歴 発症から比較的経過が長い急性心筋梗塞 心エコーで虚血領域が大きい 血管造影 責任病変のhazinessや血栓像 血管内腔径の3倍以上の長さを持つ血栓 閉塞部位が突然途絶する形態(abrupt type) 閉塞部…

人工呼吸器管理中の不感蒸泄量はどれくらいか?

不感蒸泄とは、発汗以外の皮膚および呼気からの水分喪失の事を言います。 不感蒸泄は体表面の飽和水蒸気圧と周囲の蒸気圧との差によって水分が蒸散する物理的現象です。そのため電解質の喪失を含みません。 不感蒸泄は、通常約800~1000ml/日(皮膚や粘膜か…

HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)

PCI時には免疫学的機序によるHIT(Ⅱ型)を発症する場合があります。頻度は0.5~5%(国内では0.8%)と報告されています。HITを疑う状況 至適PCIを行ったにもかかわらず、ステント内に血栓がみられる ヘパリン投与後に著明な血小板減少(10万以下、もしくは前…

造影剤腎症

ヨード造影剤による腎障害(造影剤腎症:contrast induced nephropathy:CIN)は、ヨード造影剤使用患者の1〜6%に起こります。CINのハイリスク群では約40%にCINを発症するとも言われています。ハイリスク群は以下の通りです。 腎機能低下(<GFR45ml/min/1.7…

"wide QRS tachycardia”の鑑別

可能性があるのは以下の5つです。 基礎心疾患、QRS波形、頻拍の特徴から診断できる場合が多いです。 心室頻拍 変行伝導を伴う上室性頻拍 変行伝導を伴う心房細動、心房粗動、心房頻拍 副伝導路を有する心房細動、心房粗動、心房頻拍 副伝導路の逆向性回帰性…

妊娠と出産の循環器疾患

妊娠・出産と心臓病に、非常に参考になる意見が記載されていました。基礎心疾患があるから妊娠は禁忌と言うことは簡単ですが、患者さんと共に考え、必要に応じて専門医に相談するという姿勢が必要です。妊娠時には以下の血行動態の変化が見られ、心拍出量が…

肺疾患による肺高血圧症

COPD 平均肺動脈圧が40mmHgを超えるCOPD患者は0.8〜2.7% 肺高血圧症をの診断には、心エコー、肺換気血流シンチが有用 酸素投与、禁煙、リハビリテーションの有用性が示されています。 血管拡張薬のエビデンスはありません(血管拡張薬は直接的な肺動脈圧降下…

人工弁置換術後の抗凝固療法

機械弁 ワーファリンは必須、PT-INRを2〜3に設定 ワーファリンで塞栓症を発症したら、アスピリンやジピリダモールの追加 生体弁 術後3ヶ月はワーファリンが必須 術後 3ヶ月以降は中止可(もしくは低用量アスピリンを継続)

生体弁と機械弁の選択について

人工弁の耐久性と抗血栓性の違いを考慮し、以下のポイントを検討します。 小児 40歳以下もしくは65歳以上 易出血の有無 血栓塞栓症のリスクが高い方 再手術の際、リスクが高いと考えられる方 妊娠可能な年齢にある女性の方 生体弁では構造的劣化(structual …

人工弁置換術後の慢性期合併症

気を付けないと行けないポイントは以下の3点に集約されます。 生体弁、機械弁そのものの不具合 至適な抗凝固療法 感染症対策 血栓弁 抗凝固薬が不十分な場合に起きやすい。 左心系では急激に心不全症状を発症、右心系では症状は緩徐に進行します。 人工弁の…

心尖部肥大型心筋症(apical hypertrophic cardiomyopathy)の治療と予後

肥大型心筋症(HCM)の一亜型で、白人のHCMのうち1〜3%、日本人では15%にみられると報告されています。男性に多く、高血圧合併例が多いとの事です。 Am J Cardiol. 2003 Nov 15;92(10):1183-6. ECGでは左側胸部誘導で深い陰性T波が特徴的です。確定診断には…

アルドステロン拮抗薬の心不全に対するエビデンス

心不全治療におけるアルドステロン拮抗薬の地位を確立した重要なエビデンスです。これらの試験が発表されてからアルドステロン拮抗薬の処方量が増加しているのは良いのですが、高K血症が増えているという問題があるとの事です。 RALES試験は、重症左心不全に…