HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)
PCI時には免疫学的機序によるHIT(Ⅱ型)を発症する場合があります。頻度は0.5~5%(国内では0.8%)と報告されています。
HITを疑う状況
- 至適PCIを行ったにもかかわらず、ステント内に血栓がみられる
- ヘパリン投与後に著明な血小板減少(10万以下、もしくは前値の50%以下)がある
- 他に血小板減少の要因がない
- 以前にヘパリン投与の既往がある
- HIT以外、明らかな血栓症の要因がない
HITの診断基準(4T's scoreing)
以下のスコアが6-8点で可能性が高.4-5点なら中.3点以下は低.
- 血小板減少症
2点:50%以上の減少,または最低値2-10万/μL
1点:30-50%の減少,または最低値1-1.9万/μL
0点:30%未満の減少,または最低値1万/μL
- 血小板減少の発症時期
2点:5-14日,またはヘパリン使用歴(30日以内)があり1日以内に血小板減少
1点:14日以後あるいは時期不明,
またはヘパリン使用歴(31-100日)があり1日以内に血小板減少
0点:ヘパリン投与歴がなく4日以内の血小板減少
- 血栓症,続発症
2点:血栓の新生,皮膚壊死,静注後の急性全身反応
1点:血栓の進行か再発,紅斑様の皮膚症状,血栓の疑いが濃厚
0点:なし
- 他の血小板減少の原因
2点:他の原因なし
1点:他の原因の可能性あり
0点:他の原因あり
治療は?
- ヘパリン投与の中止(トロンビン産生の抑制)
- トロンビンの不活性化(抗トロンビン薬の投与)
治療法
- ヘパリンの投与を中止
- ヘパリン化生食を中止し、生食もしくはアルガトロバン5mg+生食(500cc)に変更
- アルガトロバン(0.1mg/kg)の投与
具体的な投与方法(体重60kgの場合)
- 直後:ノバスタン1A(10mg/2ml)+生食50cc、30ccを3~5分間かけて投与
- 投与5〜10分後にACTを測定、300〜450になっていなけらば追加投与
- 直後~4時間:ノバスタン8A+生食100cc、25cc/hで投与
- ACTで300〜450、APTTで2〜2.5倍になるように調節
- それ以降:ノバスタン6A+生食100cc、4cc/hで投与
- APTTが1.5〜2倍になるように調節
診断の確定のために
- HIT抗体の測定(保険適応外、結果が出るまで数日かかる)
PCIの時に注意しておくと良いこと