生体弁と機械弁の選択について
人工弁の耐久性と抗血栓性の違いを考慮し、以下のポイントを検討します。
- 小児
- 40歳以下もしくは65歳以上
- 易出血の有無
- 血栓塞栓症のリスクが高い方
- 再手術の際、リスクが高いと考えられる方
- 妊娠可能な年齢にある女性の方
生体弁では構造的劣化(structual valve degeneration:SVD)の発症が一番の問題です。日本国内で使用できる生体弁Carpentier-Edwards pericardial valve(CEP)は術後7〜8年でSVDが進行、推定SVD期間は12〜20年と報告されています。SVDは、僧帽弁位>大動脈弁位、60歳以下>70歳以上で進行が早いと報告されていますが、想像以上に耐久性が高い印象ですね。
生体弁(CEP)の20年間の生存率は約83.9%、血栓症は16%、出血は20%、心内膜炎が5%、SVDは25%と報告されています。
透析患者ではSVDの進行が早いのですが、人工弁の種類は予後に影響を与えないとの報告があり、生体弁の埋め込みでも良いとの事です。これはもともと透析患者の予後が悪い事や、ワーファリンによる出血のリスクが高いことと関連しています。
機械弁の耐久性は30年以上ですが、抗凝固療法(ワーファリン)の継続が必要であることが問題になります。
僧帽弁置換術、大動脈弁置換術で長期生存率に関する報告がありますが、生体弁、機械弁共に10年〜20年間の生存率に差を認めせん。しかし、機械弁では抗凝固療法に関連した出血性合併症が多いとの事です。
J Thorac Cardiovasc Surg. 2001 Sep;122(3):569-77.
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