勉強ノート

診療中に気づいたClinical Questionについて、自分なりにまとめています。間違いがあったら教えて下さい。

アルドステロン拮抗薬の心不全に対するエビデンス

心不全治療におけるアルドステロン拮抗薬の地位を確立した重要なエビデンスです。これらの試験が発表されてからアルドステロン拮抗薬の処方量が増加しているのは良いのですが、高K血症が増えているという問題があるとの事です。

  • RALES試験は、重症左心不全に対する標準治療群とスピロノラクトン加群を比較し、死亡リスクが低下するかを検討しています(無作為割付け、二重盲検試験)。左室駆出率35%以下でACE阻害薬、ループ利尿薬、ジゴキシンによる治療を受けている1663症例の患者に対して、平均追跡期間24か月の中間解析の時点でスピロノラクトンの有効性が明らかになり試験は中止となりました。一次エンドポイントである全死亡に対する相対リスクは、スピロノラクトン群において0.70(95%信頼区間:0.60-0.82、p<0.001)であり、この同群における死亡リスクの30%低下は、心不全進行による死亡と心臓突然死の低下によるものでした。
  • EMPHASIS-HF試験は、左室不全による軽症心不全に対する標準治療群とエプレレノン追加群を比較することにより、死亡リスクが低下するかを検討しています(無作為割付け、二重盲検試験)。対象は左室駆出率(EF)<30% またはEF>30-35%、非ペーシング時のECGでQRS 間隔>130ms の慢性心不全でNYHA II 度の症例2,737例の症例で、すでにACE-I/ARBとβ遮断薬が投与されています。一次エンドポイントは心血管死+心不全による初回入院の複合エンドポイントですが、エプレレノン群はプラセボ群に比し有意に優れた転帰(ハザード比[HR] 0.63,P<0.001)が得られ、全死亡(HR 0.76,P=0.008)でも心不全入院(HR 0.58,P<0.001)でも有意な優越性を示しました。