勉強ノート

診療中に気づいたClinical Questionについて、自分なりにまとめています。間違いがあったら教えて下さい。

ペースメーカー:モードスイッチ(AAI⇔DDD)のエビデンス

これまでデュアルチャンバーペースメーカー(心房、心室の二腔を順次ペーシングできるもの:DDDなど)とシングルチャンバーペースメーカー(心室のみをペーシング:VVI)を比較した大規模臨床試験において、DDDはVVIと比較して、脳卒中心不全、全死亡などを減少させることが出来ないという結果でした。

これは、心室ペーシングが多い人ほど、心不全による入院、心房細動、致死性心室不整脈、死亡のリスクが高くなるからです。
www.ncbi.nlm.nih.gov

そこで、デュアルチャンバーペースメーカーに心室ペーシングを減らすようなプログラム(AAI⇔DDD)を設定すると、長期的な予後はどうなるでしょうか?

2015年のEur Heart Jの単盲検試験(ANSWER trial)では
P:洞不全症候群、房室ブロック(Ⅱ〜Ⅲ度)でペースメーカー埋め込みを受けた650例
E:心室ペーシングを減らすプログラム(Safe-R、AAI⇔DDD)
C:DDD
O:3年間のイベント発症(time-to-treat analysis)
  一次エンドポイント:心室ペーシング率、心不全、心房細動、除細動による入院
  二次エンドポイント:心不全入院、心臓死、心血管関連の入院)

結果:
Safe-Rでは、心室ペーシング率は減少、しかし、心不全入院、心房細動、除細動による入院は有意差を認めませんでした。心不全による入院/心臓死、心血管関連入院で比較すると、それぞれリスクは減少しました。
www.ncbi.nlm.nih.gov

Answer trialのサブ解析:
 バッテリー寿命が14ヶ月延長したと報告されています。
  洞不全症候群:14ヶ月
  間欠的房室ブロック:14ヶ月
  完全房室ブロック:9ヶ月
www.ncbi.nlm.nih.gov

心室ペーシングを減らすアルゴリズムのメリットは以下の2点のようです。

  1. 電池消耗を減らし、電池寿命を延ばす
  2. 心不全入院/心臓死を多少減らすことができる